経験して無駄なことは無かった!!

私は、この十数年、運動といえば太極拳など、中国由来の健康法を中心に行ってきた。

それ以前、つまり太極拳の世界に足を踏み入れる前のもっと若かりし頃は、他の運動もいろいろやっていた時期があった。ジムに通ってエアロビクスのクラスに参加したり、マシーンを使ってランニングしたり。

それから、私が太極拳以外で、もっとも長くやっていた運動はテニスである。学生の頃と社会人サークル時代を合わせると、テニス歴はだいたいトータル7~8年程度だったと思う。

太極拳を熱心に稽古するようになってからは、もう長い年月テニスはしていない。もちろんテニス自体は今でも好きなので、たまにはプロの試合をテレビ観戦する事くらいはある。でも、自分では全くしなくなってしまった。

太極拳は身一つで、狭い空間でもできるけれど、テニスはコートを予約し、打ち合うには複数のメンバーで集まらなければならない。おまけに屋外の場合は天候に左右される、自宅内でラケットを振り回してボールを打つ練習はできない等、今やテニスは、超がつくほど面倒臭がり屋の私にとって、思い立った時、手っ取り早く、簡単にできない運動の部類に入っている。

私が太極拳を始めてから最初の数年間は、動作の要領を理解しないままに、ただ黙々と先生や先輩の動作を真似ながら、少しずつ二十四式の套路を練習していた。最初の頃はハッキリ言って、上達したいという意欲はさほど無かった。

軽い気持ちで通い、太極拳の動作よりも、むしろ準備運動のストレッチが気持ちよくて、ストレッチ目的で教室に通っていたようなものだった。初期はまだ太極拳の奥深さやおもしろみに気付いてなかったのである。

そうして何年か経って、やっと多少は太極拳らしく動ける部分が出てきた頃、私は、「太極拳の足の運び、前に進む動作、何かに似てる!?」と思った。そして、「何だっけ、何だっけ・・」と考えていて、ある日ついに気づいた。

「テニスの素振りだ!!」

そうなのです。太極拳をしながら感じたのは、【太極拳の重心移動はテニスの素振りと似ている】という事だったのです。

太極拳にもいろいろな流派、種類があるので、すべてがテニスっぽいとは言えないかもしれないけれど、少なくとも簡化二十四式太極拳で前に進む際の足の運び、重心移動の仕方は、私が学生時代にやっていた「テニスの素振り」と要領が似ている。

素振りは、学生時代、先輩に教えてもらい、「1、2、3」の掛け声をかけてやっていた。

1で構え、
2で引いて、
3で押し出す。

もちろん実際にテニスをする場合、相手から来たボールを「1、2、3」ではなく、「2」のタイミングや、「1と2の中間」くらいでポンと返さなければならないシーンもあるけれど、基本の素振り練習はだいたい「1、2、3」のリズムである(少なくとも私はそのように習った)。

ところで太極拳もバランス感覚を重視するので体の中心軸が非常に大切になってくるが、テニスもボールを打つ際に、手先だけでポンッとラケットを振ってボールを打つのではなく、体の縦軸をなるべくまっすぐ立て、下半身を安定させ、上体のひねりと重心移動でもってボールを前に押し出しながらラケットで打つ。

この重心移動は、いきなりパッと前足に重心を移すのではなく、後足に乗っている体重を徐々に滑らかに少しずつ前足に移す感じ。これが非常に太極拳の重心移動と似ている。

ボールを打つ前に、ラケットを少し後ろに引いて前に出す際、後足に乗った重心が、徐々に前足に移動していく。それからラケットを持っていない方の手は腰の横で安定させ、体全体のバランスを取るのを助ける。

この辺の要領は太極拳と類似している。例をあげれば、伝統楊式太極拳をベースに作られたと言われる簡化二十四式太極拳の中では、野馬分鬃(イエマーフェンゾン)や、搂膝拗歩(ロウシーアオブー)の様に、前に進む動作に関して特に言える事である。

人生で無駄なものってないんだな。いろんな経験が思わぬ時に役立ったり、昔の感覚が蘇ってきて、これが今に生きるって事もあるんだな。私はそんな思いを強くした。

そういえば最近、テレビやネットで他のジャンルの運動を目にすると、私はいつも、太極拳愛好家としての目線でみてしまうのが癖になってきた。

テニスの素振りの重心移動だけではなく、フィギュアスケートの体の中心軸がブレてないかどうか、スキーを滑る人の体のバランスの取り方、それからフェンシングの姿勢で相手を突く動作などは、まさに太極拳の重心移動と弓歩の足のバランスを想起させる。

結局のところ、

・自分の中心軸を定め、
・体全体を上手くつかって、
・無駄な力を抜きバランス良く動くこと。

これらは多くの運動分野において結構な割合で共通するところなのだろう。



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