【脳の可塑性】~脳機能の可能性を閉ざさないように~

脳は、何歳になっても変化&成長を続ける!


最近【脳の可塑性】という言い回しを聞いて、いろいろ考えた。

「可塑(かそ)」という言葉は自分では使わないなぁ~と思いつつ、ことばの定義を確認する為にネットで検索してみた。


参考リンク:https://www.weblio.jp/content/%E5%8F%AF%E5%A1%91

意味は、「やわらかくて形を変えやすいこと、整形しやすいこと」とある。


…つまり【脳の可塑性】というのは、
脳の働きは常に発展し、柔軟性があり、成長し続ける、変化し続ける、硬直化しないものだ…と捉えればいい。たとえ脳機能の一部が低下、損傷していても、新たな刺激が加われば、脳内のいろんなネットワークが活発化し、脳の働きは成長を続ける。

人間、年を重ねると、若い頃より物覚えが悪くなったり、記憶力が衰えたりしがちなので、高齢者の方の中には、ついつい「もう年だから…」と、いろんな事へのチャレンジをあきらめたり、尻込みしてしまう人は多い。



脳機能

でも
脳の可塑性は、どんなに年齢を重ねても変わらず続くらしい
ので、めげずに好奇心をもって、何かにチャレンジし、あきらめることなく脳機能を活かした方が、人生面白いし、脳も活性化する。


ペースメーカーを入れて太極拳を続ける御高齢の方


私が指導させていただいている太極拳教室には、高齢の方もいらっしゃる。ご縁があって指導させていただいている70代のH様について、この記事で触れさせていただきたい。

H様は、自分から太極拳が習いたくて入会されたのではない。ご友人に誘われての入会だった。

このH様、自称、運動音痴。運動嫌いで、過去にほとんど運動経験がなかったそうだ。

太極拳を始める数年前には、「健康づくりに…」と思い、バレエをアレンジした運動の教室に参加した事があるそう。しかしその運動には飛んだり跳ねたりする動作が入っていたらしく、H様は「運動音痴で、しかもそんなに若くもない自分にとって、飛んだり跳ねたり…は、しんどくて続かなかった。」とおっしゃっていた。

そのH様、太極拳は稽古開始から6年目に入られた。

実はこのH様、ペースメーカーを入れていらっしゃる。

太極拳を6年間続ける中で、途中1カ月間ほど休会された事があった。そのときの休会理由というのが、“ ペースメーカーの入れ替え ” だった。新しく入れたペースメーカーが馴染むまでは稽古を休み、落ち着いてからまた再開された。

ペースメーカー入れ替え直後、最初は胴体の動きが妨げられるというか、「新しいペースメーカーが馴染むまでは、胴体をあまり動かさないように。」と医師から指示があったそうだ。

だから稽古を再開されてからは絶対に無理をしないで、軽くやんわりと動くだけにしてもらった。


体のどこかが安定していない御高齢の方を指導させていただく場合、とにかく少しずつ、無理のない範囲で動いていただく。焦らず、気長に調整していただく。

持病がある方には、かかりつけ医師にどんなことを注意するよう指示されているのか、運動はどの程度していいのか…をしっかりと確認し、必要に応じて運動のメニューを調整する。

H様曰く、太極拳教室で運動するとき、「ちっとも息が上がらないので良いよ~」とのこと。

ゆっくり緩やかに呼吸しながら動く、飛んだり跳ねたりしない、何歳になっても抵抗なく取り組める太極拳の動き。

体を圧迫するようなことも無いので、ペースメーカーを入れていても無理なく続けられる。


健康づくり


まずは年齢や身体の状態に応じた鍛錬にトライ


H様のように、ある程度の年齢に達したら「息が上がるような激しい運動はできない、したくない。」という人は多い。

何十年も生きていれば、腰や膝に故障を抱えている人もいらっしゃるわけで、そのような方々に負担の大きい運動はさせられない。そこで、ゆっくり動く太極拳を健康法として利用することは、とても有意義である。

太極拳は元来、体操ではなく武術だから、上手く動くには当然、套路であっても相手との攻防戦を意識する必要がある。

しかし高齢で持病がある方については、過剰に攻防戦を意識しなくても、とにかくその人ができる範囲で、ゆっくり呼吸をつけて筋肉を少しずつ動かせば良い。

指導する側が気をつけることは、高齢者の皆様が気後れしないよう、焦って武術的な要素を植え付けることを求め過ぎないこと。

型の動きのコツを説明しながら、その中で『健康法として太極拳を利用している高齢者の方々』に対し、ひどく心身の負担にならない指導を心がける。

この匙加減、実は非常に難しい。老若男女が通う太極拳教室において、お一人ずつの体調を考慮しながら、それぞれ難しい理論をどこまで受け入れる心理状態にあるのか見極めながら、段階を経て動きのコツを伝えていくしかない。



柔らかい動きがしなやかな身体をつくる


ところで御高齢の方には、過去の運動で腰や膝を痛めた人も多い。

私の知人でも、長年のテニス愛好者だった人が、関節を酷使して膝や肘を故障している。

また、咄嗟の判断がつかなかったケースとして、卓球のダブルスで経験の浅いプレイヤーが振りまわしたラケットがペアにぶつかり、ペアが手を骨折してしまったケースも聞き及んでいる。

私自身テニス経験があるので、走り回ってボールを拾って返す楽しさは凄く分かる。だから好きなスポーツをいつまでも続けられたら、こんなに素晴らしいことはないと思う。

けれども激しい運動は、高齢の方にとって思わぬ怪我や故障に繋がりやすいという現実がある。

太極拳


一方、健康法としての太極拳はというと、正しい姿勢で行えば、無理なポーズをとることなく血流が促せるので、腰痛などの予防になる。もし逆に太極拳で腰や膝を壊す人がいるとすれば、それは正しい姿勢と緩みが実現できないまま、”でっちり”みたいな誤った姿勢で動いてしまっているのではないかと思う。

正しい姿勢とは、たとえば膝を前方に突き出さない、筋力が極端に弱い人は深く沈まない、膝とつま先の向きを合わせる、円襠を保つ…等々、あらゆる基本を守って動けば、アクロバティックな競技でもやらない限り、太極拳で関節を痛めることはないだろう。

ゆっくりした動きは、関節内部の筋肉や腱をしなやかに保つ。

★★★★★

高齢者、若者を問わず、仕事や家事、勉強、何をするにも体力がいる。まっすぐ立つこと、座ることにも筋力が要る。

筋肉を満遍なく動かす運動は、年齢や体力に応じて調整しながら、一生続けなければならない。

運動を続ければ、筋肉が動く。

筋肉が動けば、脳が活性化する(参照:過去記事
BDNF
についての記載部分)。

脳が活性化すれば、【脳の可塑性】が実現する。

太極拳動作は、デュアルタスクに繋がる。つまり、単調に動くだけでなく、両手足は左右非対称の動き、また体や顔の向きが変わったり、筋肉を緩める意識も要るので、深層部分の筋肉を鍛えながら、脳機能もしっかり使い活性化することができる。

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