とにかく最重要だと最近感じるのは「円襠」

何年も太極拳の稽古をしてきて、色んな動作の要領を自分なりに学んできた

とにかく体のいろんな部位について、頭頂はどう保つのかとか、顎は引き気味にとか、目線は~、手足の緩みは~、はたまた腰は~、胸は~、臀部は~、とまあ、こんなふうに、姿勢を保つ要領を学び、すべての部位に神経を行き届かせつつ、体全体を調和させて動けるよう、そこそこ地道に稽古してきた。

当然のことながら、初心者の頃は全く上手くできなかったが、何年もかけて、ひたすら地味に稽古を繰り返し、最近はやっと(たまには!)思い通りの動作に近づいていると実感できる瞬間も出てきた。

それでもヒヨッコの私としては、いくら稽古しても完璧に身体のすべての部分が調和しているとは言い切れないし、おそらく一生、100%納得のいく状態にはならないかもしれない。

そんななかで最近、強く思うことがある。それは、最も重要で、最も意識すべき要領とは「円襠」ではないかということ。

勿論、円襠のほかにも、虚領頂勁、気沈丹田など、動作の要領として、身体操作の要として、意識すべきことは山ほどある。円襠だけを意識し、他はどうでもいいという事では決して無い。

しかし根本として下半身の関節の緩みや柔軟さが無ければ、上半身の緩みや手足の柔らかさも実現しない気がする。

体中の関節という関節は、筋肉等で覆われながら車両のように連結し、互いに影響し合いながら運動をする。人が静止している時は、体の一部分だけ(お腹など)をキュッと引き締めることが容易にできるが、太極拳の套路の時のように、ずっと連続して動いていく場合に、下半身だけを固く硬直させながら、同時に上半身だけは柔らかくリラックスさせるという「チグハグな構え」は非常に難しくてできない。

逆に上半身だけ力んで、下半身は緩めてリラックスというのも実現しにくいだろう。太極拳の初心者の方々にありがちな「力み」が入ってしまう状況も、「上半身だけ」とか「下半身だけ」ではなく、力んでいる人というのは、おおかた全身のあらゆる部位が緊張して動いている。上半身だけ固くて下半身は妙にリラックスできている初心者の人を今まで見たことはない。

そこで、まずは太極拳の動作を滑らかに行うための最重要課題は「円襠」である、と個人的に最近強く感じている。

両足をピーンと伸ばさず、下肢の関節を全て緩めアーチ型の下肢を作るだけでも、随分リラックスして真っ直ぐ立てる。そこに沈み込むような緩みが出て、上半身も自然に無駄な力が抜けていく。

そういった感覚を伝えたい事もあって、私が教える側に立つ場合、習いに来て下さる皆様に対して、もう、しつこいくらい「足をアーチ型に」と何度も言っている。きっと皆様は「耳にタコ」だろう。

私はなるべく、太極拳の初心者の方に指導させていただく際、「例え」を使ってイメージが湧きやすい説明をするよう心がけている。

下肢のアーチ型に関しては、いろいろな例えができると思う。スペインの建築構造物メスキータなどは良い例だと思う。ローマ時代の水道橋や長崎の眼鏡橋なども、アーチ型であることにより、一点に力を集中し過ぎることなく上手く分散し、バランスよく建ち続けられる。



人の下半身には、体全体の6~7割の筋肉が集中しており、この下半身で、重たい頭や上半身をしっかり受け止めている。もしも股周辺で円襠が実現せず、2本の足が近づき過ぎたり、膝があらぬ方向へひねられたりすれば、途端に体全体のバランスは崩れてしまう。

アーチ橋 イメージ

円襠は、当然の事ながらガニ股とは違う。(こういっては失礼になるが)ヨボヨボのおじいさんがガニ股になる原因の多くは、老化による腰回りや下肢(特に腿の内側)の筋肉の衰え、それに伴う骨盤の傾斜の変化などによって、歩くときに重たい頭や上半身を上手く支えることができず、骨盤から下のバランスが崩れ、膝周りもつま先も反り返ってしまうのだろう。

下半身は屋台骨である。太極拳を武術的な見地からみれば、相手に倒されない為には、いつも柔軟に軽快に動けるよう、足を棒のように突っ張って立っていては駄目である。しっかりとアーチ型の股をつくり、全身の軸がブレない様に立っていなければならない。

健康目的の見地からも、簡単には転ばないように、いつでもバランスよく立てる体づくりが重要である。

以上の様なことから、太極拳を学ぶ際は、極力、下肢のアーチ型を保って動くことを意識した方が良いと思う。そして内転筋を含む下肢の全部の筋肉、普段使わない筋肉も積極的に緩めながら使って重心移動する。

立っている時に人間を支えている下肢のすべての筋肉を、より柔軟にしていくのが太極拳の動きだと思う。上半身の動きや手の動作も勿論大切ではあるが、こちらは型を覚えて姿勢を整え、あとは力まずに下半身に
乗っければ
良いのである。

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