太極拳初心者の方は「海底針」でグラつきやすい

二十四式太極拳のそれぞれの動作(型)には名称がある。その名称は「動きのイメージ」で付けられているものもあれば、「動作そのものを率直に漢字で表現」しているものもある。

例えば、動作そのものを、そのまま表した名称といえば「下勢独立」などがそうである。下に低く沈む姿勢から→独立歩になるという動きそのままの名称。それから、イメージで名称が付けられているものといえば、「白鶴亮翅(バイホーリャンチー)」や「海底針(ハイディーヂェン)」などである。

この「海底針」という名称。「海底に針を刺すような」とか、「海底の針を拾うような」、「海底の針を探すような」、「海底の針をすくうような」など、教室の先生や流派によって若干、説明上の言葉のニュアンスは違うかもしれない。

ちなみに私が所属している流派では、「海底の針を拾う」という表現を主として使っている教室が多く、教材・関連書籍などでもそのように記述されている。

それはそれで良いのであるが、実際に動作をする上では気をつけなければならない。大事なのは、動作中に本当に針を拾ってはいけない、ということ。

なぜなら、針を「拾わなければならない、拾おう、拾うぞ」と思ってしまった場合、稽古歴の浅い初心者の方などは、大抵、必要以上に深く沈み過ぎてしまう。

床(地面)に落ちているものを拾う、あるいは地面に刺しこむイメージそのままで動作をしようとするので、地面スレスレまで手先を落とす感じになってしまう。そうして、頭や胴体が大きく斜めに傾いてしまい、バランスを崩してしまうのである。

太極拳の動作は、あくまでも敵と対峙して攻防戦を繰り広げている設定のものである。だから、実際に海へ繰り出して海底の針を拾って(針を刺して)いるわけではない。

しかし、太極拳を始めて間もない方に顕著にみられる傾向として、動く際に名称のイメージに引っ張られ過ぎて、床に手が付くほどしゃがみ込んで、「拾おう」、「底に針を刺そう」とする人が実際に出てきてしまうのである。

これだと頭部が
下にさがり過ぎて血圧が急激に変化する可能性があるし、胴体のバランスも前方へと崩れてしまう。さらに頭が下を向き過ぎて視界が狭まってしまい、武術的にも相手がみえない状態となり良くない。

だから教室で教える先生方は、初心者の方への海底針の動作の指導については特に要注意ポイントとして、きちんとバランスの取り方を説明した方が良いと思うし、私自身も気をつけている。

この海底針でバランスを崩さない為にはどうすれば良いか。まずは、頭や肩回り、つまり上半身の上部をぐっと下げる必要はない、傾斜は緩やかに。

拾うという言葉に引っ張られて、胴体部分をぐっと下にさげ過ぎてはいけない。緩めるのは股関節。

決して
頭を床方向にガクンと下げたり、首をガクッと下へ向けてはいけない。常に自分の周囲の前方がみえる状態でいた方が良い。

それから、上半身が下へ行き過ぎてしまうと起こりがちな悪いケース、それは股関節の位置がブレてしまうこと。これは体全体のバランスか崩れる原因となってしまい、非常に良くないと思う。

頭や肩、胸まわりが下へさがり過ぎて、
上体が下へ傾き過ぎた場合、重たい胴体と頭に引っ張られて、前に出ている虚歩の足に体重がかかり過ぎるという間違いの元になってしまう。

そもそも前足の虚歩は、重心の割合は「1」程度で、軽く床についているだけ。しかし誤って手先を床スレスレまで持っていってしまうと、前足の虚歩状態が崩れ、前足に重心がかかり過ぎてしまう。

こうなると、どうにもこうにも全体のバランスが取りにくく、胴体を支えるのに必死になってしまい、股関節の位置までもグラグラとブレてしまい、しっかり後足にのっていた重心もブレて、定位置にあった股関節がフラフラと揺れ動いて安定感が無くなってしまう。

そうならない為には、動作の名称に囚われすぎないように気をつけながら、「拾う」「探す」「すくう」といった言葉はあくまでも”イメージ的”なものなんだと割り切って、頭と上半身を傾け過ぎないよう、下げ過ぎないように気を付けるべきである。

そして、実の足(後足)に終始シッカリと乗り、重心を定め、ブレない股関節を作らなければならない。



コメント

随筆★太極拳 - にほんブログ村

↓ Amazonサイト《太極拳》関連商品