ゆったり流れる大河の様に、伸び伸び緩やかに

20年近く太極拳をやっていますと、仲間もだんだん増えてまいります。もちろん太極拳仲間のほとんどの皆様が、とても素敵な方々ばかり。皆さん稽古熱心で、太極拳ライフを楽しんでいる方々なので、私は稽古で皆様とご一緒できることがとても刺激になるし、仲間がいるって幸せなことだなぁと感じています。

ただ・・、これは太極拳に限らず、習い事の世界、いや習い事だけではなく、職場や学校などでも同様のことが言えるかと思いますが、たくさん人がいると(あくまでもごく稀にではありますが)中にはちょっと意地悪なタイプとか、自己顕示欲の塊のような人が、数十人に1人くらいの割合でいらっしゃることもあります。これは人間社会のさがであります。

私が昔出会った、辛口&意地悪タイプの人について、ここで少しお話します。ある日、稽古の時。他人様の太極拳の動作をみながら、吐き捨てるようにその人は、「あの人ヘタね! 私の方が稽古始めるのは遅かったけど、もう私の方があの人を超えたね。私のほうが勝ってる!」とおっしゃったんです(;’’)

それを聞いた私は、自分が言われたわけではないのに何となく嫌な気分になってしまい、凹みました。他人の太極拳をみて「ヘタ」とは言わないで欲しいと思いました。もし本当に上手じゃなかったとしても、教室内で人に聞こえるように言うことではないと思います。先生でさえ、「あなたは上手で、あなたは下手・・」なんて決して言わないものです。

自分の方が上だとか、超えたとか、勝ったと自画自賛して、比較対象である他人を下に置きたがる人は、普段から何事に置いても、その様な考え方が傾向としてあるのかもしれません。他人への批判や愚痴が多く、周囲の人達を敵視しがちなタイプです。このようなタイプの人についてよくよく考えてみますと、普段、稽古に来て、ご本人は気持ちよくリラックスして楽しめているのでしょうか。

競技会にでも出るケースならば、人と競うわけですから、「自分の方が上手い!」とか「あちらの方が上位」という発想が出るでしょうけれど。でも普段の教室での稽古で大事なのは、まずは肩の力を抜いてリラックスし、仲間と一緒にその日の稽古を穏やかな気持ちで楽しむことではないでしょうか。

他人をライバル視してばかりで自分を大きく見せることに必死だと、常にしんどいのでリラックスしにくいのではないでしょうか。習い事や趣味というのは、誰だって楽しみたくて通い始めたはずだと思うのです。お月謝まで払って参加しているのですから楽しまない手はありません。

勿論、太極拳には修行的要素もあり、乗り越えなければならない壁もあり、踏ん張って稽古する日もあるでしょう。でもこれは、どちらかというと己との戦いであり、過剰に仲間を敵視する必要はないのです。

そもそも太極拳は、無駄な力を抜いてリラックスし、副交感神経が優位になる運動なのです。穏やかな心構えでいる方が、稽古も充実し、緊張も緩み、血流も良くなります。だから他人をヘタだと批判するよりも、もっと自分の内面に冷静な目を向けたいものです。

太極拳は健康法として認知されているとはいえ、もともとは武術です。しかし、だからといって精神面で攻撃的になる必要はないんです。太極拳はそもそも、力んで闘争心いっぱいになるとかえって上手くいきません。

太極拳の動作や姿勢をきちんと習得するのには、とても長い時間を要します。おまけに、長年稽古している人であっても、その日の気分や体調によって、何となくバランス感覚が鈍る日が(ベテランの方でも!)ある。

ですから太極拳を学ぶ場合、心と体の両面が整えられ、その上での個人の稽古の充実が重要になってきます。その充実のためには、中国の大河の流れのような広~い心で、ゆったりと太極拳をするのが一番なのです。

マンツーマンレッスンではなく教室で共に学ぶメンバーが複数いる場合、もしかしたら人によっては極端に歩みが遅い人がいるかもしれない。でもそれがその人のペースなのです。

歩みは遅くとも、【その人の中で着実に進歩があれば良い】という事だと思うのです。だから、自分以外のメンバーの動作がもしあまり上手くいってない日があったとしても、互いに大らかな目でみればいいのではないでしょうか。

そうすれば、自分の心も穏やかに軽くなる。自分がこだわりや攻撃性を捨てれば、周囲にもそれは伝染し他人の心も穏やかに軽くなる。ひいては、教室で太極拳を学ぶメンバー全員の体の無駄な力みが消える。

それぞれの関節まわりの筋肉も適度に緩んでいき、太極拳を行うのに相応しい体の準備と精神状態が醸成されていくのではないでしょうか。



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