緩んでこそ、体の奥底からチカラが湧いてくる

関節の可動域が狭くなっている人は自然な緩みが実現できない


太極拳の動きには、とにかく緩みがとても大切なので、「緩む。力まない!」と、つい何度もしつこくこのブログに書いてきた。とにかく何度もクドクド書きたくなるほど、太極拳に緩みは必須。
特に関節まわりの筋肉の緩みが足りないと、動きが酷くぎこちなくなる。

初心者の方の場合、頭では分かっていても緩みを実現できない。実は思った以上に、「自然に力を抜く」という行為は難しい。

初心者の方が自然な緩みを実現できない理由は、大きく分けると2つある。

1つは稽古の要領や場の雰囲気にまだ馴染めていないので、精神面で緊張してしまうこと。

どんな分野でも、慣れないことにチャレンジする場合、自分で気づかない程度でも緊張する。軽い緊張は誰でも起こり得るもので、緩めようと気をつけても、最初は特に肩に力が入りやすい。

2つめに考えられる理由としては、長年の運動不足で筋肉が凝り固まっており、少し運動した程度では、凝り固まったものが緩まないということ。

これは年齢は関係ない。若いから体が柔らかいとは言えない。若くても運動習慣がない人の場合、体が硬い。逆に
70歳以上でも、簡単なストレッチや体操を続けてきた人は、体が柔らかい。

体が硬い人の中には、長年の生活習慣の蓄積によってそうなってしまった人が多いので、柔らかさを取り戻すのも焦らない方が良い。少し長い目でみて、長期間かけて体を柔軟にしていき、自然に緩む状態に体を徐々に慣らしていくしかない。

太極拳で「緩む」ということについて、武術的にはどういう意味合いがあるのか。例えば、
もし自分の筋肉、関節が固まったままだと、敵に押された時、柔軟にサッと次の体勢に移ることが難しくなる。硬直すればするほど、かえって身動きが取れなくなって倒れやすくなる。

だから常に余力を残して関節を緩め、相手がどう出ても、すぐさま柔軟に対応し、自分はどうにでも変化できる余裕を持っておく。あるときは相手の力を受けて吸収し、またあるときはかわしながら誘導。そんな変化が可能な状態をキープする。

とにかく次の動きへ、次の動きへと難なく対応するためには、力を込めて固まっている場合ではない。


受けた力を吸収→分散し、体勢を立て直す


例えば、縦長の形状の、非常に硬い物体があるとする。こういった硬い物は、倒れにくい細工でもしない限り、外側からボンッと押せばバタン!と倒れてしまう。

一方、同じ形でもゼリーのような柔らかい物体はどうか。適度に弾力のあるゼリーみたいな物体は、押してもブルルン!と揺れて元に戻ろうとするので容易には倒れない。

ゼリーは、受けた力をうまい具合に吸収→分散し、そのあと自らの体勢を立て直す。



弾力 緩み ゼリー


ゼリーでも良いし、パンナコッタやババロアのような、適度な緩みを帯びた柔らかい物。このような物は、水分を多く含んでいて特有の弾力がある。

人間の体も
60%以上は水分と言われる為、上手く使えば、外部からの力を吸収して受け流し、受けたエネルギーを放出することができる。

もっと大きなものに目を向けると、スカイツリーみたいなタワーはあんなに高くて硬いのに、なぜ強風が吹いても、地震が来てもバタンと倒れたり、ポキンと折れないのか。

それは内部の中心軸が傾かず、なおかつ内部のその構造物が揺れを吸収できる仕組みに造ってあるから。揺れを吸収し、外部からかかった力を上手く逃して真っ直ぐに立つ状態を保とうとする、五重塔のような
設計になっているらしい。だから資材が朽ちない限りは、あの場所に立ち続けることができる。

要は、どのような素材でも、外部から押される力、揺れ、振動を吸収し、分散する柔軟性のある機能と能力があれば、バランスよく立ち続けられる。

体の緩みは、精神の安定をもたらす


緩むことは、心身に適度な余裕を生む。

筋肉が緩み、自分が床に少しずつ沈む感覚を実現する。緩め、沈め、重力に逆らわないことが、かえってズッシリとした重みを生み、安定する。柔軟なのに、独特の張りとドッシリ感がある状態をキープする。

高齢者の方が、体操がわりに健康目的で太極拳をする場合も、緩めることの利点は大きい。

関節や筋肉を適度に緩めることで、血流やリンパ流などの巡りを促し、血圧も安定させる健康上のメリットがある。

そして何よりも心が落ち着く。

高齢者の方の中には、病後の人や体が弱っている人もいらっしゃる。そんな方々は腕力にものを言わせるような、いわゆる馬鹿力は元から出せない。

だから、緩みを大切にする太極拳を健康法として取り入れることは、体のケアとして理に適っている。

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