益寿延年不老春
「益寿延年不老春」という言葉がある。太極拳の理論を学んでいると出会うフレーズだ。
このフレーズが出てくる歌訣。それは、太極拳の源流なる武術の動きや、姿勢を維持する際の注意点などについて、様々な要領をうたってあるもの。
この歌訣の内容は、冒頭からずっと、延々と、動作上の注意点について散々、あれが大事、これが大事、と、いろんな文言を用いて説いてある。
それが後半になって、唐突に「益寿延年不老春」のフレーズが出てくる。終盤に、ほんとうに唐突に出てくる。この言葉は何を主張しているか。
動作や姿勢の大切な要領を守って習練を重ねれば、「健康長寿に繋がる」と示唆している。真面目に鍛錬を継続すれば、不老春、つまりは長寿に繋がるのだ…、老いない春を謳歌できるのだ…、という事をここでうたっている。
太極拳に関して言うと、長い鍛錬の道を進めば、繊細な感覚が身に付く。体の深部感覚にも良い刺激を与え、心と体の両方に深く働きかける養生法となる。現代のように物事が複雑化したストレス社会においては、特に健康法として重視されやすい。
2020年にユネスコの世界無形文化遺産に太極拳が選ばれた背景には、奥深い哲学的理論を内包した伝統拳として、また華やかな競技種目としても世界で栄えていること、そしてさらに体質強化に繋がる健康養生法としても効能が見込める、といった事情がある。それぞれ、多方面での興隆と効能などが認められたことが大きいだろう。
初心者の段階でも得られやすい効果としては、バランス感覚が磨かれる事や、インナーマッスルの強化がある。さらに稽古を積み、軽やかで緩慢な動きが可能になれば、リンパ流と血流は促され、柔軟に動く筋肉からは健全なホルモン物質が多く放出され、体内の神経伝達もスムーズになっていく。
リラックス効果も高まり、脳への血流もますます増える。太極拳の動きが脳へ働きかける効果、脳機能を活性化する効果は、太極拳歴が長いベテランになるほど高まるという。
コメント