筋肉は裏切らない
忙しいと、つい怠りがちな健康管理
多くの人が、20代のときは社会人としてまだ成熟していない。若さゆえ、精神面がドッシリと落ち着いておらず、心の余裕はなく、未熟な面も多い。だから時には失敗しながら、社会人としてのスキルを磨きながら、人生経験を積んでいく。
そして30代半ばを過ぎ、30代後半くらいからは、社会的な存在として、職場等ではベテランの域に達してきて、重要な仕事を任せてもらえる機会も増える。そうなると精神的プレッシャーがある反面、自分自身の社会的な位置づけを認識したり、組織を動かす自覚も生まれてくるので、仕事が面白くなってくる。人間関係の構築も20代の頃より上手くなるため、良い意味で世渡りが上手くなり、判断力もついてくる。
そんなふうに社会人として実力がついて、様々な事柄を上手く運べるようになる時期にこそ、気をつけたいことがある。それは健康管理である。
30~40代というのは、仕事や人づきあいの忙しさから、つい健康管理を怠りがちになりやすい。中間管理職が多い世代でもあり、気疲れも多い。仕事も忙しく、飲み会などの付き合いが避けられないこともある。
プライベートでは、家を買うなど大きな決断をしたり、子育てと親のケアが重なりやすい世代でもある。とにかく社会的に責任が重くなり、多忙な世代と言える。
そんな事情から、30~40代では、特に個人が意識しなければ運動不足のまま過ごしてしまう人が多い。10~20代の頃、引き締まった体つきだった人も、あっというまに中年太りしたり、お腹まわりがダブついてくる。痩せている人でも、運動しなければ筋力が弱って代謝が悪くなり、疲れやすくなる。
サラリーマンの人の中には、健康診断で血液検査の結果が悪くなり、あわててその直後だけ運動したり、メタボになって初めて慌てる人もいる。健康診断の直前だけ断酒をする人もいる。私は、ある企業で働いていた頃、そんな人を沢山みてきた。
本当はもっと早い時期から健康管理をコツコツとやっていくのがベターだし、たとえ忙しくても、軽い運動なら生活の中に取り入れることができる。
ちょっとした隙間の時間を使って脚を上げてみたり、お風呂上がりにドライヤーで髪を乾かしながら爪先立ちになったり、通勤途中の駅ではなるべく階段を使う。こんなふうにちょっとした工夫で、いくらでも日常生活に運動を取り入れることができる。
筋肉量のピークは、運動しなければ20代前半と言われる
10~20代の若い世代は、多少寝不足でも、疲れていても、翌日ちゃんと寝ればすぐに体力は回復する。筋肉量が多い若い世代は基礎代謝が良いので、細胞もグングン生まれ変わるし、疲労は早く取れる。
筋肉量のピークは、何の運動もしない場合20代前半という説がある。その時期を過ぎてから体のケアを怠れば、代謝力も落ち、疲れが堆積しやすくなる。油断したまま運動せずに中高年へと突き進むと、不健康な生活のツケは10年後、20年後にいきなり病となって襲ってくることがある。
60~70代になるとどうしても、「あそこが痛い。ここが動かない。」ということが増えてくる。だけど、始終そのことばかり嘆いて過ごしている方、「10年前のアナタはどうでしたか。運動は継続していましたか。いつも長時間座りっぱなしの生活ではなかったですか。筋肉をほぐしていましたか。是非、今からでも運動を始めて下さい!」(※炎症があり痛みを伴う方は医師に相談の上で運動を。)
適度な運動、適正な睡眠時間、適切な食事量&食事内容を何とか保っておけば、柔軟な体や、状態の良い心肺機能を保つ助けとなる。毎日の積み重ねが、5年後の自分、10年後の自分をつくる。
忙しくても、短時間でも良いので生活のどこかのタイミングで、運動とリラックスする時間を上手く取り入れた方がいい。しっかり運動する時間が無い日は、マインドフルネスの様な、「すべてを忘れて深い呼吸をする時間」をつくればいい。
もちろん元々の体質が虚弱な方は、あまり過剰に無理はできない。しかし油断して、運動不足のまま体のケアを放置してきた人は、今からでもケアを始めた方がいい。
高齢で関節の可動域が狭い人や、中高年以上で健康診断の数値が常に悪い人。明らかな不摂生で長期間かけて体が悪くなったのならば、一瞬で回復させるのは難しい。長期間かけて悪くなった体の部分は、長期間かけて少しずつ癒し、ほぐしていくしかない。
人生で何十年も使う自分の体を、定期的にほぐしたり、運動をしながらメンテナンスしなければならない。
夏の暑さにも、冬の寒さにも、筋肉を落とさないことが重要
現在、私は自分が太極拳を指導する立場になって、余計、切実に思う。太極拳は幾つからでも始められるし、何歳からでも遅くはないけれど、理想を言えば、疲れをためやすくなる20代後半から30代の早期に始められれば、なおのこと良いと思う。
私の最初の太極拳の先生(今は指導を引退されている)が、十数年前、私に対してこうおっしゃった。(先生は、この会話当時70代)
先生曰く、「自分は50代から太極拳をスタートしたけれど、あなたは私よりも早い年代から始められて良かったね。私ももっと早く太極拳に出会いたかった。あなたはあと何十年も太極拳できるよ!」と。
同じことを年上の先輩方からも、何度か言われたことがある。何人かの先輩は、60歳前後で、運動の必要性を感じて太極拳を始めたという。
その人達が70~80代になるまで稽古を続けてきて、「こんなに体に良いなら、早く太極拳に出会いたかった。早く始めれば良かった。」、「早く太極拳に出会って続けていたら、もっともっと深く勉強し、体のケアも長期に渡ってできた。」とおっしゃっている。
理想を言えば、筋肉の衰えや、骨粗鬆症による体の歪みが僅かでも進行する前に始めれば、なお良いと思う。深い呼吸は内臓の機能や心肺機能も強化するので、中高年に差し掛かる前から始めることで、将来の老いに備える身体をつくることができる。
もちろん太極拳にどうしても興味が湧かない方は、別の運動をしてもいい。何でもいいので運動を習慣化しておき、高齢になっても関節や筋肉が凝り固まらない体をつくった方がいい。
生活に運動を取り入れる習慣を始めれば、10年後、20年後のその人の姿勢の維持の仕方にも好影響を及ぼし、関節は柔らかくなり、筋肉は養われ、血流の良い体になる。
先日たまたまテレビでみかけた瀧島未香さん。90歳!!
年齢を感じさせない体のしなやかな動き、素晴らしいと思う。運動を継続しているか、していないかで、老後の体がこうも変わるのかと思う。見習いたい。
https://www.youtube.com/watch?v=7d2c9Fc7pm0(参考動画)
十分な筋肉量をキープすることの利点はいろいろある。
筋肉量が多いと体内の保水力が高いので、筋肉量の維持は熱中症の予防になる。冷房や冬場の寒さ、冷えの予防にも筋肉が要る。
筋肉量の維持は、代謝力アップ、血流を促す、臓器を守る、ホルモン物質も産みだす。
さらに、運動によって気分も変わる。前向きになり、心も軽く、人生感さえ良い方向にむかう。
運動で筋肉量を維持することの効果は計り知れない。(参考:過去記事)
中医学では、「病気にならないようにまず予防する。それでも病気になってしまったら病気の進行を防ぐ。」、そんな考え方をする。
筋肉を養うということも、立派な病気の予防であり、養生法である。
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