冒険家の心意気

ちょうど去年のこと。テレビのニュースをみて驚いたことがあった。それは、冒険家の堀江謙一さんが、80代なのにヨットでの冒険を決行し、太平洋横断を見事に成し遂げたニュースだった。それをみたとき、自分が高校生だった頃の記憶が蘇った。

そもそも私は、過去の細かい出来事を大抵、忘れている。友人や家族と話しているとき、人によっては何十年も前の学生時代の試験問題について、「こんな問題が出た」と具体的に覚えている人がいる。私には、そういう記憶は無い。授業や試験のことは、昔すぎて記憶にない。部活動で印象に残ったことや、特別なイベントの事ならば、さすがに少しは記憶している。

この堀江謙一さんという冒険家の方は、昔々、私が高校生だった頃、通っていた高校に講演に来て下さったことがあったのだ。去年のニュースをみたとき、“あの堀江謙一さん”が、いまだに現役であることに驚いた。登山家の三浦雄一郎さんもすごいと思うけど、堀江さんもすごい。

高齢者の中にも、お元気な方はいっぱいいらっしゃる。お元気とはいえ若者とは違うので、体のメンテナンスを怠らず、いろんな面で気を付けていらっしゃるのだろう。

つい最近、ネットで堀江さんのインタビュー記事を見たら、そこには、ギブアップしたくないとか、チャレンジという言葉が並んでいた。スーパーおじいちゃんとでも言おうか。いや、堀江さんは私の親世代だけど、“おじいちゃん”という表現は似合わない。

去年、映像で見た
84歳の堀江さんは、昔々私の高校時代に見た姿よりも、むしろ今の方が断然、精悍でカッコよく、まるで若返っているかのように姿勢が良かった。高齢であっても、何かに夢中になって取り組んでいる前向きな人は、大抵、姿勢が良い。


ヨット



私が高校生の頃、講演で聞いた堀江さんの体験談について、細かいことは正直、覚えていない。でも、いまだにはっきりと私の頭の中に記憶している堀江さんの言葉がある。それは「思い過ごし」という言葉だ。

堀江さんは、ヨットで世界を航行し、自然の脅威の中で生命の危機に直面しても、臨機応変に対応して凌ぎ、「(もうダメだと感じたが、それは)思い過ごしだった」とおっしゃっていた。私が覚えているのは、堀江さんが講演中、「思い過ごし」という言葉を複数回使っておられた事だ。

もしかしたら御本人からは、ただ何となく出た言葉だったのかもしれない。でも高校生だった私には、とても印象的な言葉に思えた。生きるか死ぬかの大変な目に遭ったのに「(もうダメだと思ったのは)思い過ごし…」と思えるメンタルの強さというか、動じないところがすごい。

危険と隣り合わせの冒険家の人からすると、何でも「思い過ごし」とでも受け取らなければ、自然相手の恐怖の中では生きていけないのかもしれない。大きな事にチャレンジするとき、いちいち深刻に考え過ぎて、起こる事象にひどく過剰反応していたら、精神がもたないだろう。

「ここは大したことなかった」、「何とかなったなぁ」、「もうダメかと思ったけど、単なる思い過ごしだったな」、そんなふうに楽天的に受け取るスルー力も必要なのかもしれない。

「思い過ごし」という言葉は、究極の危機管理の言葉にさえ思えてくる。「オレ、大丈夫かな…」と不安に怯えてビビりまくるよりも、精神を安定させるためには「何でも思い過ごし」と思えるほどドッシリかまえないと、冷静な判断力が養われず、命をかけた冒険の旅なんてできないのかもしれない。

堀江さんが
80歳を過ぎても、ずっと冒険を続けられるのは、恐怖に打ち勝って平常心を保つ、良い意味でのスルー力を備えていらっしゃるからかもしれない。そうでもなければ、高齢の身で危険な旅には出られないだろう。

打たれ強さや、深刻に考え過ぎない性質は、生きる上では必要なものだ。
100歳までヨットに乗るおつもりだという堀江さんの発言をネットサイトでみかけた。年齢の限界を超える意識を持つこと、自分の可能性に制約をもうけない事は、生きる力になりそうだ。

実はこんな私でも、知人から「行動力があるね」と言われることがある。確かに1人でパッと行動する事がよくある。でも私の場合は、堀江さんのように、ポジティブ精神を持ち合わせているのではない。

恐れというか、「マグロみたいに、止まったら自分が終わってしまうような怖さ」があり、行動せずにはいられないところがある。何も行動しないよりは、それもポジティブと呼べるのかもしれないけど、堀江さんのようにチャレンジを楽しみ、人生を前進させる意気込みまでは、なかなか持てずに、ただ日々もがいているだけだ。

幸い、太極拳や、その他の養生法を日常に取り入れるようになってからは、それらが私に心の余裕を与えてくれるようになった。やはり何をするにも適度に力を抜き、ゆったりと呼吸しながら、過剰に力んだり頑張り過ぎないこと。「ときには休みながら」が良い。

私のように、超ポジティブにはなれない「中途半端なやる気しかない人間」は、ポジティブとネガティブの間を行ったり来たりしながら、それでも好きなことを、そこそこ楽しんで追求していく。それで良い。自分は、冒険家の堀江さんや三浦さんにはなれないのだから。

堀江さんのような“高齢者”がいらっしゃることを知れば、「夢中になれるものがあって、常にトライしながら
老いていくのも悪くない、そんなふうに思える。

このような
冒険家の人達をみて、「
80代でヨットで世界へ よくやるその一言で片付けるのは簡単なことだけど、やはり、その人が希望をもって、自分の可能性を信じてやってだし、んなチャレンジを応援する人もいる。チャレンジする方も、応援する方も、何だか元気になれる、それが生きる醍醐味であること間違いない。

コメント

ココ さんのコメント…
自分の人生がわりと波瀾万丈だと思ってたのですが、
それも思い過ごしだなぁと最近は感じます。
読ませていただきながら、あ、これでいいんだ!って思いました。
なんだか、気持ちが楽になる考えです。
タイチーマルゲリータ さんの投稿…
ココ様、

読んで下さってありがとうございます(*^-^*)

人生の先輩方には本当にすごい方々がいらっしゃいますが
本当にすごい人でも決して偉ぶってない人も多く、なんだか親しみが持てます。
いろんな方々から、日々、人生哲学を学ばせていただいております。
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