心に残る作品

12月も半ばを過ぎた。2024年は、ずっと落ち着かない状態で過ごした。今年、私の近しい親族が高齢で亡くなった。持病はあったけれど、最期は苦しまずに、眠るように亡くなった。余談になるが、その高齢の親族は、過去に両膝に人工関節を入れていた。火葬後、人骨に埋もれて人工関節が2つ(両足分)出てきた。他にも、配偶者の遠縁に、今年亡くなった人がいた。その遠縁の人は60代で、早過ぎる死だった。親族は早すぎる死を悼み、残念に思っている。本人が一番無念だったと思う。

当たり前だけど、人はみんな、どんな人でも、いつかは死ぬ。自分の親族のみならず、ネットニュースなどで、俳優、歌手、政治家など有名人の訃報を目にするたびに、そんな当たり前のことを実感する(過去に死についてふれたブログ記事)。この数年だと、俳優の渡辺裕之さん、渡辺徹さん、シンガーなら、もんたよしのりさん、八代亜紀さん、谷村新司さんなど、自分が子供の頃からずっと観てきた人達が亡くなられた。漫画家の楳図かずおさんも。そして同世代の中山美穂さんまで…。

私は特に中山美穂さんのファンではないけど、同世代なのでヒットした昔の歌は記憶している。「Sea Paradise -OLの反乱-」、「Rosa、この2曲が私の印象に残っている。昔、「Sea Paradise -OLの反乱-」という曲を聞いたとき、「こんな歌も歌うんだ~」という新鮮な驚きがあった。ミディアムテンポの難しい曲。本人が作詞をしていて、歌詞が独特で印象的だった。「Rosa」という曲は、私が昔、学生時代にバイトしていた先で、ずっと有線で曲が流れていて、当時、何度も聴き過ぎて、すっかり覚えてしまった。

有名な方の死というと、さかのぼれば、今は亡き俳優さんの中に、私が幼い頃みていた昭和の名優と言えるような、味わい深い演技をされる方もおられた。例えば、随分前に亡くなられた植木等さん。「スーダラ節」は、たぶん私の親より上の世代が、若い頃に聴いていた曲だと思う。コミカルかつ煩悩いっぱいの歌詞。今、ネット動画でこの歌を聴いてみると、人間らしい、ちょっとだらしない歌詞がなかなか良い。人は誘惑に弱く、滑稽な生き物だ。

「人間だから、失敗する事もあるよね」、「人生には、物事の歯車が噛み合わない時期もあるよね」、「すべて完璧ではなく、みんな多少はだらしない部分もあるよね」と、他人の駄目さ加減を許す風潮があっても良いと思える。スーダラ節を聴いたら、そう思える。何でも目くじら立てていたら、みんな疲れてしまう。

今はネット上で、誰でも、いつでも意見を書き込めるので、一億総評論家みたいな時代になり、話題によっては、「他人の失態を許さない!」という風潮が目立つケースもある。有名人が失敗や失言をしようものなら、ネット上で延々と叩かれてしまう事もある。しかし、同じ事をしても、何故か、すんなり許される人もいる。

気軽にいろんな人がネット上で私見を述べる事ができる良い時代だけど、ときに窮屈な気分になる事もある。あまりにも「失言許さじ!」「失敗許さじ!」という風潮が強くなると、人は、ちょっとした会話にも気を使うようになる。大勢の人が他者の失敗に過剰反応すると、普通に会話を楽しめなくなってしまう。人は、間違える生き物だ。間違えたとき、本人が「次からは、このような過ちを繰り返さないようにしよう!」と経験から学んで、良い方に向かえば良い。

仕事ならミスは良くない。だけど誰もが常に100%完璧とは限らない。誰かが失敗したとき、周囲の人はクドクドなじるのでは無く、組織内での後のフォローの方が大切だと思う。失敗してしまった人に対して、誰かが激怒したり、なじったりしても、失敗した事実が変わるわけではないから。怒りにまかせ説教に時間を費やすより、次にどうやって事態を好転させるか、すぐ検討する方が建設的だと思う。

近頃、世の中は「○○ハラスメント」だらけに思える。どこからどこまでが普通の発言として許されるのか、判断が難しい。人の為を思って助言した事が、受け取る相手によっては立派な「○○ハラ」だと受け取られる可能性もある。そうすると、「余計なことは言うまい」となってしまう。少しの問題が起こるのも怖くなり、人と積極的に関わる事を避けたくなってしまう。

例えば、失敗した人に対して説教し、激しくののしった場合、勢いで人格否定までする人がいるかもしれない。勢いで、言わなくていい事まで口走ってしまうかもしれない。だから、みんなに少しの温かみと心の余裕があって、一緒に先をみて対応策を考える、その方が良い。


今年、俳優の西田敏行さんが亡くなられた。幼い頃からドラマなどで観てきた人だ。そういえば私の学生時代の友人は「釣りバカ日誌」のファンだった。私は特に西田さんのファンでは無く、過去にテレビドラマ「白い巨塔」を観たときは、やり過ぎというか、大袈裟な演技が浮いているようにみえた。だけど、それは人物を明快に分かりやすく印象づける、計算ずくの演技だったのだろう。

西田敏行さんが名優である事はファンではない私にも分かる。(失礼ながら)イケメンでは無いのに、二枚目役までこなせる俳優さん。私はずっと前から、西田敏行さんがジェラールドパルデューみたいだ、と思っていた。ジェラールドパルデューも、いわゆるイケメン俳優ではない(失礼💦)。それでも凄く格好良くて、二枚目役もできる名優だと思う。昔、彼が演じた「シラノドベルジュラック」は圧巻の演技だったと記憶している。近頃ネットで彼の名前を検索してみると、よからぬ噂があるようで、それが真実かどうか気になるところではある。

私はこれまで、あまり映画を観てこなかった。映画に疎い自分だけど、ジェラールドパルデューのように強く印象に残っている俳優さんもいて、彼の作品は過去にいくつか観た。彼は「レミゼラブル」でジャンバルジャンも演じている。それから「DEUX」という作品も、ずっと昔、観た事がある。これ、私の記憶違いでなければ、ラストシーンは屋外、しかも河原で出産するという奇怪な演出だった。ちょっと理解不能な、何だか訳の分からない展開が淡々と進んでいくのは案外、仏映画らしくて良い。

それから他に、印象的な俳優さんや映画と言えば、思い出すのは、これも、かなり昔の映画だけど、「ピアノレッスン」。ホリーハンターの想い人を演じた俳優さんの演技も、渋みがあって良かった。彼は、ミュージシャンの南佳孝さんに何となく似ているなぁと、観た当時思ったものだった。

それから「LEONの悪役などで有名なゲイリーオールドマン。私が彼の役で印象に残っているのは、「不滅の恋ベートーベン」。もう、ベートーベンにしか見えなかった。小学校の音楽室に貼ってあった髪がボサボサの、あの肖像画みたいな印象。この映画の中で、ベートーベンが道端に倒れているシーンがあって(そんなシーンがあったと記憶している)、その虚無な感じが印象深かった。

彼はチャーチルを演じてアカデミー賞を受賞したけど、私の中では、やはりベートーベンだ。それから、心根が優しく、かつ情熱的な宣教師を演じた映画もあった。宣教師が禁断の恋に落ちる。ゲイリーオールドマンの何とも言えない目の表情、醸し出される色気のある役だった。こういう名優と呼べる俳優さんの演技の良さは、目の表情が何とも言えない憂いを含んでいるところ。

これも昔の映画で、「ウォーターワールド」。ケビンコスナーが半魚人(!?)を演じていて、おかしな役だな、猿の惑星じゃあるまいし…、と当時は思えた。でも、ここ数年の世界各地での豪雨や洪水、サイクロンなどの現象をみると、ウォーターワールドという映画が、恐ろしいほどに近未来を現わしているように思える。

それから昔、シェークスピアの「十二夜」を映画化したものを観た事がある。この映画は、かなり昔、観てハマった。とにかく名優揃い。どの俳優さんの演技も素晴らしかった。正直、ストーリーは大した内容ではないのだけど、とにかく名演技がてんこ盛り。

まず、ベンキングズレー。彼は、「ガンジー」役の印象が強い。英国の映画「モーリス」(ヒューグランドが若い頃に出ていた)では、ミステリアスな怪しい人物を上手く演じていた。モーリスは小説を映画化したもので、宗教の教義などを理由に同性愛者が罪人とされていた過去のストーリー。切ない人間模様が描かれている。主役級の俳優さん達が健気で美しい。

同性愛を描いたストーリーで印象に残っている作品は、他にもある。「太陽と月に背いて」だ。詩人のランボーをL・ディカプリオが演じている。若い頃のディカプリオの作品と言えば、このランボー役と、そして「ギルバートブレイプ」の名演技は、とても印象に残っている。

ベンキングズレーは、喜怒哀楽の表情を大袈裟に出さない演技をする方だと思う。それゆえに微妙な表情づくりが印象的で素晴らしい。「十二夜」では、何ともお気楽な道化役だった。お気楽な役なのに、目ヂカラだけは妙に強かった。

それからヘレナボナムカーターさん。とにかく可愛い。彼女の昔の映画「眺めのいい部屋」は、正直、そんなに盛り上がるようなストーリーでは無かったけれど、風景も素晴らしく、ヘレナさんがとにかく可憐い。「十二夜」では、我儘なお嬢様の役で、衣装が綺麗で、ちょっとコミカルな表情も上手くキュートに演じていた。

それから、この映画版「十二夜」で、最も異彩を放っていたのが、執事マルヴェーリオ役の俳優さんの演技。彼の演技は秀逸だった。日本では、顔芸に加え、演技そのものも手いと言われている歌舞伎関係の俳優さんがいる。でも私には、その人がただ大げさな顔芸をしているだけにしか見えない(辛口批評でごめんなさい)。映画「十二夜」の執事役の方は、顔芸というか、滑稽な表情をつくりながらも、同時に演技の底力があり、哀愁漂う雰囲気を出すのが上手く、観ていて深い演技に引き込まれた。

「十二夜」の執事役は、本当にハマリ役だったと思う。この方、名前は何だったかな。ええと…(検索)。ナイジェル・ホーソーンさん。残念ながら、もう亡くなられている。

こんなふうに印象深い作品を少し並べて書いてみると、随分古いものばかり。映画をあまり観てこなかったので、懐かしい作品ばかりになってしまう…。

映画


ところで、子供の頃と大人になってからでは、俳優や文化人など、有名人の見方が変わってきたように思う。幼い頃に歌手、俳優などを観ていたときは、パッとみて華やかな人、可愛い人、格好良い人、ノリの良い人に魅かれた。


でも大人になってみると、その人の口調、モノの考え方、醸し出す雰囲気で、好き嫌いを判断するようになった。年齢を重ねた人から滲み出る渋さも気になる。どんなに外見が整っていて、格好良い人がいたとしても、話す内容が低俗で、自己中心的ならば、やはりゲンナリしてしまうものだ。ショービジネスは虚構の世界だと思うけど、演じる人の人間性はどうしても滲み出るのではないか。


私が現在、ご高齢の日本の俳優さんの中で、存在感があっていいな、ステキだな、と思うのは伊東四朗さん。マルチな才能をお持ちの方だと思う。ずっと前のNHK大河ドラマ(「平清盛」2012年の作品)で、白河法皇を演じられたのを観た事があり、すごく印象に残っている。喜劇役者だけどシリアスな表情が上手い。この方も、何とも言えない目ヂカラがあり、ベテランの貫禄と余裕がある。


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