初マツケンサンバ🌸

松平健さんの舞台を観た。実は私、松平健さんのファンではない。何十年もテレビ放送されてきたらしい暴れん坊将軍を、今まで、テレビで観た事は１度も無かった。

では今回、なぜ舞台を観たか…と言うと、マツケンサンバⅡを生のステージで観たいなぁ～と、ふと思ったから。去年１年間、親族の死や病気などがあり、私は、何となく気持ちが滅入っていた。それで、「気晴らしに、何か明るいパッとしたものが観たいなぁ！」と思い、チケットを入手していたのだった。

舞台は大きく２部構成になっていて、最初は御芝居の舞台。後半は歌のショーだった。私は、映画やコンサート以外のエンターテインメントとして、御芝居の舞台を観た経験はあまり無い。

初めてきちんとした芝居らしい芝居を観たのは、中学生の頃で、宝塚歌劇団のステージだった。親戚に連れていってもらったのだけど、当時、私自身は大して宝塚に興味が無かったから、そのときのトップスターが誰だったのか、演目は何だったのか、全く覚えていない。

その後、学生時代や大人になってからは、様々なアーティストのライブなどに何度か行ったけど、御芝居の舞台はほとんど観た経験が無い。記憶している限りでは、好きな玉三郎さんのチケットを購入して、舞踊中心の舞台を観た事はある。それ以外は、華やかな舞台観劇の経験がなく、私が今まで好んで観てきたものといえば、舞台装置や衣装が極限までシンプルに構成された能や狂言のみだった。

それゆえ、松平健さんの時代劇の舞台や、華やかな歌のショーは新鮮だった。特別ファンじゃない私でも、ちゃんと楽しめた。

松平健さんは70を超えていらっしゃるけど、３時間半ほどの舞台をこなしておられた。それを１日に２公演やれば、１日７時間もステージ上で演じている事になる。すごく体力をつけておかなければ、できない事なので、本当にプロだなぁ、凄いなぁ…と思った。

体のケアや、入念な稽古を、繰り返し、繰り返し、頑張っていらっしゃるのだろう。そして特別ファンでは無い私から見ても、やっぱり松平健さんはスター🌟だった。普通、70過ぎている男性で、しかも体形がそこそこドッシリしている人がいれば、ただの中年太りしたオジサンだと思えるものだけど、やっぱり長年、舞台で活躍している人は、立ち姿が美しい！

足のステップなんか、70過ぎているとは思えなくて、おまけに時代劇の御芝居では、立ち回りも美しかった。やっぱりプロだなぁ～。老齢でも、あんなに華麗な殺陣が可能なんて。やっぱり継続は力なりだと思う。

私は、御年配の方に運動を指導している立場なので、どうしても、こう考えてしまう。松平健さんが70歳を超えてもハードな舞台をこなす様子を見て、「この方、どれほどのトレーニングを普段から積んでいるのだろうか！」と。想像するに、本当に努力の塊のような方なのだろうと思った。

70歳以上になると、普通なら、片足をちょっと上げるだけで、よろけてしまう人が多い。運動不足や筋力不足の人は、スイスイ進むことができない。松平さんの場合、華麗なステップ、流暢なセリフまわし。間違いなく、膨大なセリフを覚え、振り付けを覚え、歌詞を覚え、そして同じ舞台に立つ演者さん達と、調和して動く。それらの様子を観て、その背景にある努力を感じる。これがプロなんだと。

本当のプロというのは、やっぱり舞台上で不安を感じさせないものだと思う。以前、野村万斎さんの狂言を観たときも同様に思ったけど、今回もそう思った。キャリアの長い、安定した、成熟した技術を持っている人の舞台を観ると、安心して見られるので、不安なく、内容を素直に楽しむ事ができる。

後半の歌のショーでは、やっぱり最後の曲は、マツケンサンバⅡだった。周りのお客さんもすごく楽しそうで、私もすごく楽しいな～と思った。会場全体が沸き立った雰囲気。

ロックコンサートではないし、アイドルのコンサートでもないので、キャーキャー歓声をあげる人はいなかったけど、会場全体が華やかな雰囲気になった。マツケンサンバⅡで、ホールが一体となった感じで、隣の席の人も、ノリノリで手拍子をうっていた。これが夢を売るプロの仕事なんだなぁ…。

松平健さんは芸能生活50周年だそうだ。私が物心つくかつかないかの頃から活動されているようだ。時代劇の暴れん坊将軍をきちんと観た事がなかった私だけど、御芝居のストーリーもちゃんと楽しめた。時代劇にありがちな、世直し、悪人を成敗する！というものだった。

ちなみにその日、会場にいらっしゃった客層はというと、意外にも、若く見える層もかなりおられた。私の勝手な憶測で、会場に入るまでは、「松平健さんの舞台を観る90％くらいは高齢者だろう」と思い込んでいた。でも私の隣は、若い男性だったし、他にも、予想していたより若い層が結構おられた。

私は素人なので、演じるという事については、よく知らない。ただ、観る側からすると、演技というのは面白いもので、どういう経歴で演技をしてきたか、というのが舞台上で現れていた。今回、共演者などについて予備知識も無く、下調べもせず、御芝居を観ていて、途中で、「なんか、タカラジェンヌみたいな演技をする人がいるなぁ～」と思いながら観ていたら、その方は、宝塚の元男役トップの人だったらしい。

やはり元トップだった人だけあって、セリフまわし、歌、ダンス、動くときの胴体のラインが美しく、素晴らしかった。時代劇だけど、いかにもタカラジェンヌという雰囲気が漂っていて、それはそれで、長年培ってこられた個性としてみれば、面白いなと思った。

また今回の舞台を観て、裏方の人達の働きというのも、すごいなぁと思った。照明さんは勿論、舞台装置も頻繁に変わり、たくさんの裏方さん達が客席から見えないところで頑張っていらっしゃったようだ。１つの公演を行うのに一体、何人の専門の人が、どんな仕事をしているのだろう。特別なファンじゃない私でも、そういうことに思いを馳せながら、より楽しく観る事ができた。

この舞台を観て、たくさんの裏方さんや演者さん達が１つの目標に向かって頑張ってこられた様子が分かり、チームプレーを乱す人がいたら、こうも素晴らしく楽しい舞台はできないだろうと強く感じた。もし、このチームの中に、他人を蹴落とし、我儘を通す人がいたら、皆さんが気持ちよく演技できないだろう。

一般論で言うと、会社員の仕事も同じ。個人仕事ならまだ良いけれど、チームで、何かの目的に向かって頑張るとき、輪（和）を乱す人がいたら非常に困る。今は個人主義の時代だけど、人間は社会集団を作って生きるものだから、やはり協調する心というのは、何をするにも普遍的に必要だと思う。