優雅な動物の動き『五禽戯』~part.1(虎)

私は太極拳の稽古を始めて以降、“中国由来のモノ繋がり”という括りで、太極拳以外の運動や養生法もいくつか試してみた。ものによっては数年間、稽古を継続してきた。

このうち、動物(虎、鹿、熊、猿、鳥)の動作を模した体操『五禽戯』は、とても心地よくて気に入っている。五禽戯は、後漢末期の医師、華佗が考案したと言われており、なんと
1800年もの長き歴史があるという。

歴史が長いものは、どんなジャンルのものでも得てして流派が分かれる傾向にある。日本でも古くから存在する茶道、華道、日舞等々、だいたい何百年という長い年月が流れると、考え方や立場、流儀、作法が違う方向へ枝分かれして各流派に分かれる。中国の五禽戯にも多数の流派が存在するらしい。


私が健康法として生活に取り入れている五禽戯は、『健身気功の五禽戯』である。これは中国の国家体育総局によって2002年に発表されたもの。元々存在する五禽戯各流派の動作を研究して、誰もがより動きやすく学びやすいよう一連の動作に改編、まとめられたもの。
※参考になる動画

あまり複雑な動作は入っておらず、ひどく強い負荷を体に与えることも無いので、初めての人や年配の方でも、動物のイメージを持ちながら気持ちよく動くことができる。


具体的な動きのノウハウについては専門書や専門サイトに詳細が掲載されているので、このブログでは動きの順番など細かい事には触れず、「五禽戯を実際にやってみた感想」を中心に書いてみようと思う。

(最初の予備式の動作についてのコメントは省きます)


<虎戯>


🐯
~虎挙~


虎の動作のことに具体的に触れる前に、(余談になるが)まず文字について。私は五禽戯の動作を習得するにあたり、気功の体験会に参加したり、専門書を購入して読んだり、色んな動画を観たりと、様々な媒体で学んでみた。

五禽戯の動作のポイントは自分でノートにメモしてまとめた。そのメモを自分で見返しながら「ありゃ?」と思った。「虎挙」と書くべきところを「虎拳」と書き間違えていた。ふと「拳」と「挙」の漢字って形が似ていて紛らわしいと思った。

いや、まったく違う字なのだけど、でもパッと見、間違うほど造形が似ている。言わずもがな「拳」は太極拳の拳、拳法の拳、漢字の意味としてはコブシのこと。一方の「挙」は、挙手の挙、上げる、上がること。分かりきった事のはずなのに、間違えてハッとした次第でした
💦

話を動作のことに戻そう。虎挙は、メリハリをつけるのがコツ。手指の関節を曲げて爪の形をシッカリ作る際は虎の猛威を表し、そこから拳に転じて腕を上げ下げする際は無駄な力を抜いて緩め、ふんわりと動かす。

ネコ科の動物というのは、力強い獰猛な面と、しなやかで繊細な動きをする面と、両方を備えている。爪を作る際は指先に張りが出て、次にこれを緩めたら指先の毛細血管まで血流が良くなる。メリハリをつければ、寒い冬に手先が冷えた時にも良い運動になりそう。


以前テレビの健康番組で、手をグーパー✊✋するのを繰り返すと、一酸化窒素NOが出て血管を柔らかくすると言っていた。虎挙のように指の力を変化させ、張りから緩みへと転じる動作も同様の効果を生むと考えられるので、これは血管をしなやかに保つことに一役買う運動だと思う。

🐯~虎撲~

これは、体の柔軟性が非常に試される運動。五禽戯を長く稽古して慣れている人は大丈夫だが、初めて行う場合は要注意。

最初に前に上半身を沈める時、理想は胴体が床と平行になるくらい沈むけれど、これはいくら激しい運動じゃないとは言え、慣れていない人がいきなりやると危ないと思う。

例えば、腰が悪い人、高齢の骨粗しょう症の人などは、最初は用心して浅くゆっくりと沈むようにした方が良い。

私自身は太極拳や練功十八法などをずっと何年も稽古しているので上半身の柔軟性がまぁまぁ保たれており、虎撲の動作ではいつもフワッと胴体を床と平行にしている。でも慣れない人は、虎撲の動作を最初から深く沈めてやらない方がいいと思う。


それから途中動作で、胴体(背中)を縦にしならせる蛹動の動作が入るが、これも初めての人は要注意。

背骨や腰に慢性の痛みがある人は、酷い場合は医師の許可を得て運動した方が良いと思うし、酷くない人も用心して緩やかに、その時自分ができそうな範囲で加減してやった方がいいと思う。

逆に普段から生活の中に運動を積極的に取り入れていて柔軟性に自信がある人は、何も深く気にせずに気持ちよく胴体部分を縦にしならせると良いと思う。


爪の形は、「獲物を狙う虎が爪を立てますぞ!」と言わんばかりに指の第一&第二関節を折り、蛹動のあとは爪を立てた手を前に出して獲物に襲い掛かる。

自分の人生において自分が虎になり、あたかも肉食獣よろしく可愛い鹿ちゃんに襲い掛かるような動きの経験など、幼稚園の学芸会以外で滅多にできる経験ではない。ちょっと大袈裟な言い方になるけれど、これはなかなか儲けものの体験で、「虎になっちゃたぞ!ガオー」と頭の中でイメージして、なりきって演舞した方が楽しめるし気持ちが良いと思う。

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